自動車事故、AIがスピード見積もり

コラム （2019/11/30）

自動車を運転中、思わぬことに遭遇するひとつに事故が挙げられる。できる限り避けたいことではあるが、損傷した車両には修理がつきもの。時間も費用も必要になるが、その時間を少しでも短くするサービスが登場している。なんとAIがその場で見積もり修理額を提示するという。どういう仕組みなのか。

・車両をスマホ撮影、送信
画期的なサービスを打ち出したのは、損保ジャパン日本興亜。AIを使い、概算修理金額を見積る「SOMPO AI修理見積」を同社の公式LINEアカウント内で開始している。システムは同社とイードリーマー、オプトの三社が共同開発した。システム開発はイードリーマーが、チャットシステムへの実装をオプトが担ったという。なお、自動車の修理についてAI自動修理見積もりサービスの実用化は業界初となり、同社によるとAIを活用した修理見積もり機能は特許出願中だという。

これまで修理金額の見積もりは、損保会社の事故担当者による立ち会いや修理工場への持ち込みが必要であり、事故受付から修理金額の支払いまでおよそ1～2週間かかるというのが通常の目安とされていた。一方、新たなシステムを導入した場合、最短で30分程度で支払いが可能になるという。仕組みはこうだ。まず、事故に遭った契約者自身が同社のLINE公式アカウントを登録した上で、トークルーム内から受付を選択する。事故に遭ったことを連絡の上、撮影画面を立ち上げて車両の損傷部分を撮り、送信。すると、画像データに基づき、AIが概算修理金額が算出される。画像と概算修理金額は同社の事故担当者へも送信され、それをもとに支払い対象となる保険金をチャットで案内するという。損傷した車両の撮影後、見積り額が提示するまでわずか数十秒となり、その場での自己処理対応が可能なことから事務手続きが簡素化され、また人件費も大きく削減されるため、契約者と損保会社両方にとって”ウィン･ウィン”の状況を築くことができる。

システム開発にあたり、事故車の撮影写真をおよそ35万枚を取り込むことで、修理見積もり額と実際の費用との誤差は5％以内に留まったという。ただし、水没など見た目の損傷が明確でない場合は判定が難しいため、今後はデータをさらに蓄積することで精度を高めていくとしている。

・事故受付ツールに早くからLINEを活用
AIを活用する修理見積もりの実用化は業界初となるが、同社はこれまでもLINEによるサービス提供を行ってきた。事故受付、事故対応サービスは2018年10月から開始。従来の電話、郵送、メールに加え、LINEによるチャットでのコミュニケーション手段を追加することで、事故対応時のやりとりの円滑化を目指したという。電話オンリーであれば見積りの画像送信は難しく、メールの場合はコミュニケーションのタイミングにタイムロスが生じやすい。郵送であれば何をするにしても時間を要する。しかし、LINEでのチャットを活用すれば、ダイレクトにやりとりが出来る上に画像送信も可能であることから、より処理能力が向上する。迅速な対応が可能となるため、担当者、契約者双方において無駄な時間の発生を抑えることができる。

LINE活用に合わせ、懸念していた個人情報の取り扱いもクリアした。同社が独自に開発したチャットシステムを使用することでLINEから移動し、セキュリティの高い同社の管理サーバーで保存され、契約者のスマートフォン端末にもデータは残らない仕組みになっている。事故連絡が24時間365日可能なことはもちろん、対応時間の短縮により、迅速にサポートを得ることができるようになれば、契約者としてはこの上ない安心材料になることは明らかだ。システムの活用により、現在は画像だけでなく、ドライブレコーダーを利用した動画を情報として提供する契約者もいるという。独自のチャットシステムであればこそ、のサービスであり、同社では、この先もコミュニケーションツールとしての”深化”を続けていきたいとしている。

今回、新たにAIによる事故見積もりを開始した同社であるが、すでに取り扱う保険業務としては、火災保険、傷害保険、海外旅行保険のジャンルにおいてもLINEを利用したサービスを提供していえる。いずれも専用フォームを使い、写真やチャットでのフォローを行い、火災保険および傷害保険の場合、契約した保険に見合った金額請求を完結させることができる仕組みになっている。また、近い将来に向けてはAIによるサービス拡張を意識しており、例えば火災保険等、台風など風水害による保険の支払い手続きにおいてもシステム活用を目指すということだ。