トヨタが提唱する”コネクティッドカー”とは

コラム （2018/06/28）

6月26日、トヨタ自動車が新型クラウンおよび新型カローラ スポーツを発表した。これらのモデルには車載通信機DCM（データ･コミュニケーション･モデュール）を標準搭載されており、クルマで移動中にもさまざまな場所と”コネクティッド＝つながる”ことが可能となる。これまで、他メーカー含め、高級車両ではサービスの一環として提供されてきたサービスとはいったい何が異なるのか。そして、なぜ搭載車としてカローラスポーツが選ばれたのか。

・次世代モビリティライフを提案
この度の新車発表に合わせ、同社が用意したニュースリリースには、「新たなモビリティライフを提案する、初代コネクティッドカー」、「”コネクティッド”と”クルマ本来の楽しさ”を融合した”新世代ベーシック”カー」という文字が並んだ。

実のところ、コネクティッドカーとしてトヨタが販売を始めるのは、このカローラ スポーツだけに限らない。同日発表された15代目の新型クラウンもこの車載通信機DCMを標準搭載する。ところで、なにがコネクティッド、つまり”つながる”のか。簡単に言ってしまうと、クルマに搭載された通信機（DCM）によってさまざまなオンラインサービスを活用できるのが、コネクティッドカーの特色。車両には、トヨタが構築したコネクティッドカー向け情報インフラとなる「モビリティサービス･プラットフォーム（MSPF）」の遠隔サービスで走行アドバイスや車両診断を受けることができる「eケアサービス」はじめ、「LINEマイカーアカウント」などを利用することができる。

クルマが単なる移動手段に留まることなく新たなモビリティ社会の中でクルマという存在感を確立するため、現在、自動車メーカーはさまざまなサービス構築に奔走している。中でも通信環境が躍進的に拡張した今日、クルマと人との関わり方に変化が見られるようになった。携帯電話という通信端末ではなく、クルマそのものと人をつなぐシステムを導入することで、クルマという小さな箱がまたたく間に外の世界と連携することが可能になったのだ。

・カローラに託されたもの
今回、発表された新車カローラは12代目になる一般大衆車ではあるが、その初代は1966年に誕生。「カローラで日本にモータリゼーションを」という思いから生まれた車両だと同社のリリースには記されている。また、かつて「いつかはクラウン」という同社の有名な広告コピーがあったが、その一方でカローラはトヨタがリリースする車両のファーストカーとして長く君臨し続けているのも事実。販売累計台数も4600万台を超えるロングセラーカーとして果たす役割も大きい
だからこそ、この新型車はコネクティッドカーとしてリリースする必要があったのではないか、と思われる。

自動車を特別のものではなく、大衆のものとして浸透させたかつての役割から、時代とともに変化するカローラを強くアピールするためにもコネクティッドカーとして新しいユーザーに訴求することが、カローラ スポーツの役目だったのだ。”次世代・新世代”のベーシックカーとして、乗り手とクルマとの新しい関係がどんどんと構築されていくことになるだろう。

なお、カローラ スポーツには、同社が明らかにしている「コネクティッドサービス」であるT-Connectサービスが3年間無料で提供される。「eケア走行アドバイス」、「eケアヘルスチェックレポート」、「ヘルプネット」と呼ばれるサービスによって、車両トラブルの回避、万が一、異常が発生した場合は、オペレータがドライバーにアドバイスを送るなど、まるでコンシェルジュサービスを受けるような錯覚に陥るかもしれない。もちろん、”かゆいところに手が届く”的サービスだけでなく、事故発生時の速やかな手配にも対応する。

もっとも、ユーザーが積極的に利用したいと思うのは先述のようなサービスよりも、いわゆる”スマホ”のアプリに似通ったものではないだろうか。当然のことながらこの類のサービスもフォローしており、AI音声エージェントによるナビ設定やオーディオ操作等も可能だ。さらには、LINEマイカーアカウントを装備。これは自分のクルマを”友だち”として認証することでクルマとの会話が可能になるというもの。「安全･安心」に加え、「快適･便利」をも提供するコネクティッドカー。人とクルマのつながりをしっかり体感できるサービスの充実化は、自動運転技術よりも自動車ユーザーの心を捉えるのではないかと考えられる。