「WRX STI A-Line」を試乗するのは今回が初めてですが、ワインディングを走行した印象は排気量が500cc増やされた分、トルクがさらに"モリモリ"出ている感じがしました。
サスペンションは"4ドアセダンの性格"を考慮すると、若干「固め」の乗り心地ですが、インプレッサらしい個性と言えそうです。
高速クルージングを快適に移動するクルマではありませんが、コーナーを攻めたくなるクルマに仕上げられています。
ワインディングを少し攻めてみると、アンダーステア傾向の挙動を示しました。
しかし、タイヤグリップの7~8割程度で走ってみると評価が変わります。
ステアリングを切った瞬間の応答性が良く、ハンドルを切った方向にノーズが"ピクッピクッ"向きを変えてくれるのですごく気持ちよく楽しめます。
ただし、限界付近になるとアンダーステアが現れてきます。
安全志向のセッティングといえそうですね。
オートマチックは、ツインクラッチ式のような最新タイプではなく昔ながらのオートマチックです。
ツインクラッチ式は、変速ショックが大きく街中でギクシャク感を感じることがありますが、WRX STI A-Lineに搭載される5ATは変速ショックが少ないので快適にクルージングできます。
パドルシフトが付いていますので、ワインディングを気持ちよく走行することができました。
ブリッピング機能も付いていますので、1速へのシフトダウンもスムーズに変速できました。
また、Dレンジで走行する場合、走行状態をコンピュータが判別して、ペースを上げていくと高いエンジン回転数を自動的に保ってくれます。
コーナーの手前で減速するとブリッピングが自動的に働き最適なギヤに合わせてくれますので、コーナーをスムーズに立ち上がることができます。凄く賢い制御ですね。
総合的に評価すると、安定性が高く少し飛ばしてみても"ドキッ"とすることがありません。
サーキットをガンガン攻めてタイムを競うようなクルマではありませんが、ミニサーキットを"楽しむ"用途であればノーマルのままでも十分対応できると思います。
WRX STI A-Lineは「街乗りがメインで、たまにミニサーキットを攻めたい!」そんなクルマに仕上げられていますね。
インプレッサWRX STIは、排気量が2リットルと比較的小さいわりに低速トルクが太く、アクセルを踏み込んだ瞬間から加速してくれます。
とても扱い易く、タイム計測する場合も運転しやすいクルマだと思います。
ただし「WRX STI A-Line」と比較すると、キャラクターの違いが体感できました。
ステアリングを切ったときの応答性は「WRX STI」がシャープな印象です。
その違いがどこにあるのかわかりませんが、感覚的には"ステアリングのギヤ比が変えてあるのでは?"と思うぐらいの差がありました。
ハンドリングも「WRX STI A-Line」の4ドアセダンと比べて車体重量は10kg程度しか変わりませんが、「WRX STI」はその差以上に軽くキビキビと動いてくれます。
ワインディングやサーキットであれば「WRX STI」の方が速くて楽しめるでしょう。
サスペンションは「WRX STI A-Line」の4ドアよりも突き上げ感が少ない印象です。
単純に硬い柔らかいのではなく、路面の小さな凹凸を拾ったときの追従性などが良い印象です。
「WRX STI」の用途を考えると、相当ハードに味付けされていてもおかしくないだけに予想外の結果でした。
スポーティなハンドリングもこちらに軍配ですね。
「WRX STI」は、センターデフのセッティングができるのが特徴で、デフロックを効かした状態から効きを弱くした状態まで任意に設定できます。
いろいろ試してみて、ハンドリング特性の変化やコースに最適な設定を探してみるのも面白いと思います。
基本的にはオートで良いと思いますよ。
ワインディングを走行するレベルでは、センターデフの違いはわかりませんでしたが、全開走行がおこなえるサーキットだったら効きの違いが体感できるでしょう。
パワー感は、「WRX STI」の方が排気量が小さいのですが、最高出力も最大トルクも勝っています。
フィーリング的には大差ありませんが、排気量が小さいからといって低速トルクが犠牲になっている印象はまったくありません。
どの回転域からでも加速してくれるフィーリングはとても好きです。
ボクサーエンジンらしいサウンドを奏で、スバルのクルマを運転していることを再確認させられます。
ただし、駆動系を支えるブッシュの柔らかさが気になりました。
1速や2速でクラッチをミートした時、若干の「ヨレ」を感じたからです。
それが直れば文句ありません。
「WRX STI」と「WRX STI A-Line」のどちらを購入するかで迷うところですが、それぞれの趣味趣向や用途、ボディ形状の好き嫌いもあると思います。
ハンドリングやフィーリングを選択基準にするなら、僕は「WRX STI」の5ドアハッチバックを選ぶでしょうね。
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