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コラム
(2026/08/27)7月末、ついに中国発の軽EV「RACCO(ラッコ)」が日本の市場にデビューした。手掛けたのは、中国の電気自動車大手であるBYD。軽自動車という日本独自の市場に、EVを導入した初の輸入車となる。手頃な価格、取り回しがラクな車体で発売前から注目を集めたが、どうやら好調なスタートを切ったようだ。
・RACCOはどういうクルマ?
軽乗用車のEVとして誕生したラッコ。これまで軽乗用車といえば、日本のお家芸。かつて、「スマート」や「フィアット126」など軽自動車のサイズに適合した輸入車もあったが、いずれもクルマ好きなユーザー向けの車両であり、いわゆる日本における軽自動車のような万人向けのクルマとは言い難いものだった。一方、日本国内の軽自動車販売台数は乗用車を超えるものであり、複数台車両を保有する家庭では、セカンドカー的な位置づけにもなっている。根強い人気がある軽自動車の市場に外国資本のEVが登場するとあって、発売前から多くの話題を集めたのは言うまでもない。
もともと電池事業をルーツに持つBYDだが、今やアメリカ・テスラを抜いて電気自動車の年間販売台数で世界首位に立つグローバルEVリーダーに上り詰めている。車載バッテリーはもとより半導体を含め、自社グループでEVを作り上げる一貫生産が奏功し、コスト競争でも強い力を発揮しているようだ。
そんなBYDが真っ向勝負で日本の軽乗用車市場にEVを投入するのだから、徹底的に市場調査を行なったはず。今回のラッコがBYD初となる海外専用車として製造されたのもそれなりの理由がある。まず、車体。全高1800mmの背高ボディに両側電動スライドドアを搭載した。すでに日本のメーカーも導入する「スーパーハイトワゴン」だが、当然ながら、この車両も高さ制限1,550mmの一般的な標準型機械式立体駐車場には入らないということ。一方で、スライドドアを両側に備えたのは軽EV初となる。また、航続距離においても、日本メーカー以上の数値が記載されており、充電回数が少なくて済むことをアピールしている。そして、やはり一番気になるのが車体価格だろう。EVは政府や自治体の補助金が適用されるため、車両価格より安く購入が可能だ。ただし、自治体の補助金は、東京都のように軽EVに限らず車体によっては90万円が支給されるが、補助金そのものがない自治体もあるので注意が必要だ。自治体からの補助金とは別に、一律に受給できる国の補助金だけを適用した場合、最安グレードの214万5千円(税込み)から15万円が引かれ、199万5千円となる。実のところ、国産EVにおける補助金は約58万円であり、ラッコの15万円とは格差はあるが、もともと車両価格が高額であるために適用後の価格で比較すると大差はなく、むしろグレードによっては安くなり、競争力のある価格設定になっていることがわかる。
・販売後、受注は好調
発売からおよそ3週間が過ぎたが、先週の時点で累計受注は1000台を超えたとのこと。2023年、日本市場に参入したBYDだが、EV市場の拡大が遅々として進まない日本では販売苦戦が続いている。そのせいか、これまで日本に導入された他のEVモデルと比較しても過去最速のペースだという。軽EVならではの反響なのかもしれない。日本独自のクルマ文化のなかにどう軽乗用車が根付いているのかを徹底調査し、そこにEVならではのメリットを存分に投入したものと考えられる。また、同社によると、人気高は最上級グレードといい、販売の8割を占めるという。
そして、気になるデータが。今回の受注は乗り換えや新規購入より、”さらなる1台”_つまり増車が購入の理由として一番多いという。置き換えではなく、プラス1台の対象としてラッコを選択したユーザーが多いのだ。そのせいか、自宅充電が可能という回答も5割を超えているそうだ。ファーストカーではなく、「ラッコってどんな感じなの?」と関心をもったユーザーが別の1台として食指が動いたのかもしれない。今後、利用が定着し、ユーザーからのフィードバックを重ねることで、より日本のライフスタイルに適合したラッコへと進化していく可能性もある。同社では、今後のサービス対応を意識し、販売網の強化も進めていくという。
以前、ラッコが発表されたとき、日本市場を経て欧州へのデビューを目論むという報道もあったが、日本の厳しいユーザーから高い評価を得るようになれば、この軽EVは日本に留まらず、世界の軽EVとして躍進する可能性があるのかもしれない。ラッコの登場により、国産メーカーも見直しを迫られる必要性が出てくるのではないだろうか。