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日本メーカーのコラボEV、中止へ

コラム

(2026/03/30)

3月末になり、自動車業界ひいては日本の製造メーカーに関連した残念なニュースが飛び込んできた。世界に名を馳せるエンタテイン面ととテクノロジーの企業として知らえるソニーと、自動車はもとより小型飛行機や船舶でも躍進するホンダにおる電気自動車(EV)の開発と発売を中止するというものだ。戦略においてなにがあったのか、そしてどういう理由から中止を選んだのか。

・業界の垣根を超えるはずが
奇しくも、GTNET今年最初のコラムで触れたのが『ソニーとホンダのタッグによるEV、販売を先送りへ』だった。この時点では、年明け早々にアメリカで開催されたCESに「ソニー・ホンダモビリティ」が出展、実車デリバリーの開始のメドがたったことをアナウンスしたと記した。具体的には、2025年の秋に工場での試作車製造を開始、現在は第2弾としてSUVタイプの開発を進めいるとの説明が行なわれたが、CES会場にはまだプロトタイプのものが展示されただけだった。一方、関係者には量産開始後の納車が「2026年半ば」から「2026年中」に”延期”されたことを説明しており、結果として日本からの顧客の予約車両も、2026年中から2027年前半に遅れるという発表があり、どこかしら暗雲が立ち込めているような雰囲気があったのも確かだ。

そして流れてきた今回の”中止”決定のニュース。両社が発表したところによると、現時点で手掛けていた2車種の開発と発売を中止し、顧客から預かった予約金はすべて返金するという。また、あわせて、SUV車両の開発を第2弾として予定していたが、こちらのプロジェクトも断念することが明らかにされた。

両社による協業の”なれそめ”は、2021年。ホンダがEVはもとより、将来のモビリティの在り方を模索するなか、自動車メーカーという枠を取っ払い、異業種との協業による新たなステージでの挑戦を目指したいと、ソニーに勉強会を打診したことに始まる。当時、ソニーもまたエンタテインメントの可能性を模索するなかで、移動ツールとして形態が変わっていくであろう”モビリティ”に着目。クルマという移動の箱は作れても、ソフトウェアでのエンタメ技術に欠けるホンダがソニーにアプローチすることで、両社の”足りないもの、欲しいもの”が一致。その後、2022年3月に正式に提携が発表された。その後、同年10月にはソニーとホンダが折半出資する形でソニー・ホンダモビリティが誕生。まず「AFEELA(アフィーラ)」という名のEVをリリースすることが発表され、異業種連携は多くの話題を集め、日本における大手企業による”ウィン・ウィン”のビジネス誕生にも思われた。

・エンジンからEVへとシフトしたホンダだが…
ホンダはホンダでエンジン車の生産からEVへの一本化に舵を切っており、いわば”退路を断つ”形で事業を進めている。2021年4月に「脱エンジン宣言」を掲げ、2040年までにすべての新車をEVもしくは燃料電池車にすることを目標とした。4輪だけでなく2輪も含めると、世界でもっとも多くのエンジンを生産してきたホンダにとって、大きすぎるほどの決断だったはずだ。衝撃の発表を経て、ソニーとの協業はホンダの本気を語るにはもってこいの題材だったはず。しかしながら、大きな話題は今や風前の灯ともいえる状態となってしまった。

・鈍化するEV市場
依然としてEVの風が吹かない日本の自動車消費。加えて、脱エンジン車を宣言していた欧州もそのタイミングを先延ばしにし始めている。中国メーカーばかりが台頭し、市販車モデルを送り出してきたアメリカのテスラですら、EVからAI関連、ロボット作りに軸足を置く勢いだ。長く自動車産業に携わってきた欧州では、EV一辺倒にできるわけもなく、それは日本とて同じこと。脱炭素と声高らかに言えど、世の中はまだまだ石油に頼らざるを得ない状況であり、昨今の中東問題で世界中が急騰する重油価格に青色吐息だ。

最たるはアメリカにおけるEV需要の鈍化だ。トランプ政権が消極的なこともあり、昨秋には、EV購入の補助が打ち切られている。結果的にさまざまな面で影響が広がり、その煽りを受けたホンダは本陣であるEV戦略の見直しを迫られ、北米で発売を予定していた新型のEV3車種の開発が中止に追い込まれた。こうなると、ホンダもソニーとの協業を再考しなければならなくなるのも当然のこと。結果としてアフィーラの開発の前提でもあったホンダの技術、そして生産装備の活用が困難となり、アフィーラの開発、発売が遅延に留まらず、とうとう中止に追い込まれることになった。

ホンダはEV開発や発売中止の影響による損失を計上。2026年3月期決算における純損益が最大で6900億円という赤字になる見通しを明らかにしている。こうなれば、ソニーとて火中の栗を自ら進んで拾うわけにもいかない。ホンダの足元が不安定になるなかで、ホンダの生産拠点や技術を活用することはできず、協業の前提がくずれた今、両社が下す判断は”中止”しかなかったといえる。

両社は今後も協業を続けるか協議するとのことだが、異業種によるコラボレーションは、どちらがひとつ欠ければ成立しない危うさを孕んでいる。日本では珍しい”化学反応”に大きな期待と注目が集まっていたが、残念ながらこのまま幻で終わってしまうのだろうか。

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