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R35 GT-R、生産終了。再登場の可能性は?

コラム

(2025/08/28)

8月26日、日産自動車の栃木工場でとある車両のオフライン式が行なわれた。現地でのイベントには、日産や部品メーカーの関係者が参加し、世界中に広がるファンにとっては得も言われぬ寂しさを感じとったかもしれない。その車両、R35型日産GT-Rが18年間の生産を終え、日産からは高性能スポーツカーが不在となる。

・およそ4万8千台を生産
同社における現行生産車のラインナップから、GT-Rが消えてしまうのは18年ぶり。つまり、R35 GT-Rは18年という長きにわたり生産を続けられてきた車両ということにもなる。この間、およそ4万8千台が工場から出荷され、日本はもとより世界中のGT-Rの元へと届けられた。もともと、「スカイラインGT-Rという名前で生を受けた車両であり、セダン車も製造された「スカイライン」のレーシング仕様車として1969年に誕生。それから数々の伝統を作り上げた一方で、生産中止にも追い込まれたことが二度ある。まさに、波乱万丈の”人生”を過ごしたクルマでもある。

現行車のR35 GT-Rは、生産復活後の2007年に誕生。これを機に、「スカイライン」のタイトルが外れ、「日産GT-R」となって新たな車種としてデビューする。世界戦略車としての役割を背負い、すべての車両は、このたび最後の車両を完成させた栃木県上三川町で組み立て続けた。強力なパフォーマンスをもつVR38DETTエンジン、アテーサET-S全輪駆動システム、革新的な空力設計などをもち、エンジンは別途横浜工場の“匠”と呼ばれる9人の熟練工によってすべて手作業で組み立てられてきたという。

発売当初の販売価格は、税込み777万円。「誰でも、どこでも、どんな時でも最高のスーパーカーライフを楽しめる」というコンセプトを具現化。スポーツカーでありながら騒音を抑え、乗り心地を優先。乗り降りしやすくトランクの積載量も確保した新次元の「マルチパフォーマンス・スーパーカー」と銘打ち、スポーツカーでありながら、日常使いのクルマとしてユーザーにアピールするクルマでもあった。一方、2025年モデルのNISMOスペシャルエディションは、メーカー希望小売価格が約3061万3000円(消費税込)まで高騰。また、現行モデルとしては最も安いグレードでも1444万円となり、発売当初bの1.8倍以上になった。最終日に完成した最後の1台は、日本のオーナーに届けられるという。


・日常使いのクルマでも可能なスポーツカーライフを実現
市街地での快適なドライビングが堪能できるクルマは、走行する道路や天候、ステアリングを握るドライバーに左右されないポテンシャルを披露できるクルマである一方、スポーツカーとしての訴求にも力を注いだ。

R35 GT-Rは、ドイツのスポーツカーとして有名なポルシェなどに対抗する国産スポーツカーとしても注目を集めた。2007年にはドイツのニュルブルクリンクサーキットで当時の量産車による世界最速タイム(7分38秒)を刻んだ。その心臓として、エンジンには排気量3.8LのV型6気筒ツインターボ「VR38DETT」を採用。6速のデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)を組み合わせて高い加速性能を実現した。さらに翌年、標準使用のGT-Rで再挑戦。7分29秒までタイムを縮めるという快挙だった。

デビュー以来、マイナーチェンジは二度行なわれた。今回、最後の生産となったのは、2023年からの後期モデルとなる。2024年モデルを使い、国内のコンパクトなサーキットとして知られる筑波サーキットでは、ラップタイム記録に挑戦。NISMO仕様の社労で59秒078という最速ラップタイムを樹立している。

・生産終了の背景にあるのは
国内外のモーターファンから根強い人気を誇る屈指のスポーツカーだが、法規対応や半導体部品などの調達が難しくなり、断腸の思いで決断することになる。排ガス規制といった環境問題はじめ、衝突防止のカメラを付けるポテンシャルの有無など、多方面で直面する課題をクリアすることが難しくなったのだ。よって、関係者は、スポーツカー市場の需要が少なくなり、生産終了となったのではないことを強調した。

同社の社長であるイヴァン・エスピノーサ氏は、式典でのビデオメッセージに登場し、「GT-Rが自動車産業に決して消えない足跡を残したことに疑問の余地はありません。GT-Rファンの皆さま、これはGT-Rとの永遠の別れではありません。GT-Rは、いつか再び皆さまのもとに戻ってくることを目指しています」とコメントを残した。つまり、メーカーとして次期モデル「R36」の生産に意欲を見せているのだ。「皆さまには辛抱強くお待ちいただくことをお願いしたいと思います。現時点で正確な計画は確定していませんが、GT-Rは進化し、再び登場するでしょう」と語ったエスピノーサ社長の言葉が具現化するのは、果たしていつになるのか。同社を取り巻く経営状況が厳しいなか、採算を取りにくいスポーツカーの新規開発にGOサインを出すためには、まず経営再建を成功させることにある。日産の復活こそが、R36 GT-R誕生の足がかりになることは間違いないだろう。

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