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コラム
(2025/08/18)依然としてアメリカとの関税問題に揺れ続ける日本企業。8月上旬、新聞各社では、関税政策が与える日本の自動車メーカーへの影響として、大幅な減益になる予想であることを報じている。あらためて、自動車関税について、おさらいしてみよう。
・日米合意、とは言うものの
アメリカから新たな関税率が発表されたのは、8月7日。この時点で、トランプ政権は、日本へ15%の関税を課すことになった。一方、これに先んじてアメリカで行なわれた会談では、日本側は従来の税率が15%以上の項目に関しては、上乗せされないという「日米合意」を発表していた。15%未満のものに関しては15%へと引き上げるものの、すでに15%のものはこれまでと変わりがないという解釈で落ち着いていた。ところが、実際は大統領令やアメリカ当局に文書に反映されることはなく、結果、これまでの税率に対し、一律でさらに15%が上乗せされるという驚きの形となったのだ。15%という数字を見て、一度は安堵した自動車メーカー、関連企業がほとんどだろう。しかし、大統領令などにこうした措置が適用されることは記されておらず、一気に逆風が吹くことに。当然ながら、政府としても大慌てで事実確認を行なうような形となり、混乱を招くこととなった。
・もともと2.5%が15%に!?
もともと日本からアメリカに輸入する乗用車に対し、アメリカは2.5%の関税を課してきた。それが今年4月の時点で完成車に対して25%という高い追加関税を課すことになった。つまり、合計で27.5%という膨大な増加を強いられてきた。残念なことに現在もその税率は続いており、引き下げのタイミングがいつになるのかがまだ見えてこない。加えて、完成車だけでなく自動車の主要部品においても今年5月から課税を開始。大手自動車メーカーに限らず、関連部品を手掛ける中小企業にとっても逆風が拭き続けている状態だ。
今回の日米合意を日本側の解釈に当てはめた場合、新たな関税率は15%に下がることになる。5ヶ月ほど高い税率に対応してきたが、渡米していた担当大臣はじめ、政府内ではようやく引き下げが行なわれると捉えていた。ところが、アメリカ側は、対談後も日米の合意に沿った関税率にするために必要となる大統領令などの手続きを未だに行なっていないという。正式な合意に向け、さらに会談を重ね、修正される方向であるようだが、残念ながらそのタイミングは”霧の中”。一方、合意成立が果たされたとしても、そこから実施までさらに日を要するとのこと。事実、イギリスがアメリカと合意に達してから実際に発動されるまでなんと54日にもかかったという。”ノラリクラリ”という表現がぴったりのような、あまりにも自己都合の合意と受け止められても仕方ないのではないだろうか。日米の担当大臣が”合意”に至ったとしても、最終的に実行するのは大統領自身。つまり、トランプ氏がペンを手にサインをしなければ、なにも決まらないのだ。大統領の気持ちひとつで決まってしまう関税率とは……。
・自動車メーカーに与える影響は?
アメリカに完成車を輸出している各自動車メーカーでは、2026年3月期予想として関税の影響額や営業利益を発表している。一番大きな影響額を予想しているのは、やはりトヨタ。1兆4000億円に及ぶとし、営業利益も3割強の減益になると予想した。一方、同社はアメリカでの現地生産も多いため、大打撃というものではないのかもしれない。とはいえ減益には違いなく、全体を見ても自動車7社の2025年4月から6月決算は営業利益、純利益とも減益となっており、うち日産とマツダは赤字に転落した。また、スバルやマツダは北米への輸出依存度が高いメーカーであり、これからのトランプ関税がボディブローのように響いてくるのは否めない。
なにやら長期戦になりそうな”トランプ関税”。足繁く担当大臣がアメリカ詣でをしているが、日本政府としては、最終的には大統領自身によるサインが完了しなければ、どうすることもできない。くすぶり続ける火種が一日も早く鎮火することを願うのみだ。