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日産、追浜、湘南工場での車両生産終了を発表

コラム

(2025/07/29)

経営の立て直しを迫られている日産自動車が、このほど同社の追浜工場および湘南工場での車両生産の終了を発表した。今年5月に発表した経営再建計画で稼働工場を削減する方針を掲げていたが、ようやく具体的に対象となる工場名が明らかになった。現在の状況をおさらいする。

・生産終了、すなわち工場閉鎖
世界的な販売の不振によって、昨年度の決算では、6700億円あまりの巨額赤字となった日産自動車。再建計画にあたり、日産では従業員2万人の削減を掲げ、また新たに就任したエスピノーサ社長が過剰な生産体制の見直しに着目。結果、2027年度までに国内外にある17つの車両生産工場を10まで削減する方針を打ち出していた。だが、この大胆なリストラ策を受けて該当する工場がどこになるのか、詳細のほとんどが明らかになっていなかった。閉鎖・休止の対象は「中国を除いて日産が出資している工場」としていたが、インドのチェンナイ工場とアルゼンチンのピックアップトラック工場はすでに公式に発表されていたが、今回はようやく日本国内の対象となる工場の名前が明らかとなった。国内の主要生産拠点での生産を終えるのは、2001年以来。東京都にあった村山工場以降、四半世紀ぶりとなる。

神奈川県横須賀市にある追浜工場はもともと主力工場として知られる。現時点で主力商品のコンパクトカー「ノート」などを生産しているが、だが、この工場での生産を2027年度末に終了。福岡県にある子会社の「日産自動車九州」の工場に移管・統合すると発表。一方、同社の子会社である湘南工場は神奈川県平塚市に位置する。こちらは委託している車両生産を2026年度末に終了するとしている。商用バンを生産しており、およそ1200人が働いている。会見では、生産終了という言葉に留まったが、終了は工場閉鎖を意味すると言っても過言ではないだろう。

・日産の主力工場だった追浜
会見では、生産終了後の追浜工場の活用法については、今後検討するとしている。1961年に乗用車専用工場としての操業を開始した追浜工場。かつて「ブルーバード」はじめ「マーチ」といった主力車種を生産し、その後は2010年から電気自動車「リーフ」を生産開始。2016年はコンパクトカー「ノート」の生産を手掛けるなど、同社の花形車両を生産し続けてきた工場のひとつといっても良いだろう。だが、今年3月には「リーフ」の生産が終了しており、新型モデルは栃木県にある工場に移管することになっている。つまり、近年では事業不振に陥るなかで工場の稼働率の低さが課題になっていた。追浜工場にはおよそ2400人の従業員がいるというが、生産終了時まで勤務を継続し、その後は方針が決まり次第、周知するとしている。

「現在の厳しい状況から脱し、再び成長軌道に戻るためにやらなければならないと判断した」と会見で述べたエスピノーザ社長。今回の発表に合わせ、国内の工場における車両生産拠点の削減や統合はこれ以上行なわないとも述べている。結果、国内の完成車工場は、栃木工場と福岡にある2工場に集約されることになる。

・閉鎖後の活用は
なお、追浜には生産工場のほか、研究所やテストコースさらに車両輸出用の埠頭を所有する。日産では、工場部分だけを生産終了後に売却の検討を進めるとしている。エスピノーザ社長は「複数のパートナーと交渉中」と明らかにしたが、噂として、電子製品受託製造大手である台湾の鴻海精密工業が電気自動車を生産するのではないか、という話も浮上している。機密保持契約があるため、多くを語らなかった同社長だが、鴻海とはEV分野での協業を検討しているという話もあるだけに、仮に協業が実現すれば、追浜工場も継続可能となり、従業員の雇用も維持される見通しとなる。

いずれにせよ、まだ検討レベルであり、日産が思い描く構造改革プランである「Re:Nissan」にどれだけ近づくことができるのか。今後も注視する必要がありそうだ。

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