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トヨタ、水素エンジン車の市販化に向けて加速

コラム (2022/07/13)

6月上旬、静岡・富士スピードウェイにて開催されたスーパー耐久第2戦の富士24時間レースにおいて、水素エンジンカローラが完走を果たした。1年前のデビューレースでは358周だった周回数がおよそ3割増となる478周まで増えるなど、その進化をしっかりとアピールした。インフラの普及など社会環境におけるサポートが充実しない限り、まだまだ水素エンジン車両が一般ユーザーの興味を惹くとは考えにくいが、それでもトヨタでは市販に向けて着実な道のりを示しているようだ。

・改良進み、市販化まで4合目に
先月の当コラムにおいても紹介したが、富士24時間レースを前にして、トヨタの佐藤恒治執行役員が水素カローラの開発、進捗状況を富士登山に例えて「市販化するまでに現在は4合目まで登ってきた。これから商用の用途、乗用の用途に向けてチャレンジをしていきたい」とコメントした。市販車の時期は未定ながら、チャレンジの先にあるのは量産化であることを明確にすることとなった。

1年前の富士戦以降、各地のサーキットでも参戦を継続し、さまざまな問題と向き合い進化を遂げてきたレース車両。レース中に不可欠なレース中のピット作業の時短化もめざましく、給水素の充填時間は5分から1分半へと格段に短縮しており、航続距離では約20%、出力は約20%、そしてトルクは約30%それぞれ向上。これは車両のパワートレインの開発が躍進的に進んだ証拠でもある。とはいえ、前述の佐藤執行役員による「4合目登頂」から先の道のりはさらに険しいという声もある。同社がレースイベント前に行った会見では、市販化に向けてのロードマップを公開した。

・市販化に向けて
1合目 燃料開発・要素技術開発
2合目 性能開発・機能信頼性課題出し
3合目 燃費開発
4合目 排気開発
5合目 機能信頼性/対策
6合目 タンク小型化
7合目 実証評価
8合目 ドラビリ作り込み
9合目 NV作り込み
10合目 その1・商用
その2・乗用

という表記をしていたが、直近の目標は「機能信頼性とその対策」であり、これらはレース活動を通じてトライ&エラーを重ねていくことになるはずだ。そしてその先に見える6合目の「タンク小型化」だが、これも充填時間の短縮と航続距離の延長は今年の富士24時間でのレースデータで実証されてはいるが、さらに改良の余地があるとしている。

とりわけその中でも尽力しているのが水素の液体補充。液体水素を走行時に気化させる技術の改善に取り組んでいる。液体水素の体積は気体のおよそ800分の1のため、これが実現するとより多くの水素を車両に搭載することが可能になるのはもちろんのこと、車両内のタンク小型化へとつながる。また、インフラとして欠かせない水素ステーションの設置においても、およそ4分の1のサイズで運用が可能になるとしている。とはいえ、液体水素の温度はマイナス253度であると言われており、ガソリンをはるかに上回る取り扱いの難しさが難題でもある。また、現時点で液体水素のタンクを作っているメーカーはほぼ皆無。トヨタでは協力企業と共に開発に取り組んでいるとのことだが、これが実用化できるようになれば、レースでの給水素のために設営される水素ステーションが驚くほどコンパクトサイズになると考えられる。当然のことながら、現在はピットとはかけ離れた場所にあるステーションを別途設置する必要もなくなり、ガソリン車同様にピットでの給水素も夢ではなくなるというわけだ。まずは、安全確保を第一に、加えて操作性の向上に向けてのデータ収集をレースという”実験場”で継続して行うことになるだろう。

・電気自動車一辺倒でいいのか?
水素エンジン車の市販化を加速させることを第一に考えた場合、液体水素の実用化を待つよりも気体水素仕様車両の市販化を強化したほうが、正直話は早いだろう。一方で、トヨタが水素エンジンの開発に取り組む背景にあるのは「内燃機構NG」への抵抗でもある。日本の国家産業の基幹として長らく君臨し続けてきた自動車工業を全面的に否定するようなこの「内燃機関NG」というキーワード。世界中の自動車メーカーが電気自動車や燃料電池車へとシフトする昨今の動向に警鐘を鳴らしているようにも思われる。カーボンニュートラルという言葉が幅を利かせる中で、エンジンを用いる自動車はガソリンを燃やし、二酸化炭素を排出する”悪者”として例えられるようになってしまった。そんな中、トヨタが声高に唱えたのが、内燃機関ではあるものの水素エンジン車両は二酸化炭素を排出しないということだった。先人がこれまで時間をかけて開発を続けてきた技術力を継承、活用しながら地球にやさしい温暖化対策になり得るのが水素エンジン車両であり、その存在価値を知らしめようと精力的に開発を続けているのである。

実のところ、世界的に見てもEVに限定してカーボンニュートラルを実現するのは難しいという自動車メーカーの見解もあると言われており、今後は一時的にEVが幅を利かせることになったとしても、その先に見据えられるのは水素エンジン車ではないかという解に辿り着く。自動車メーカーがメーカーたる所以として欠かせない内燃機関を終焉させるはずはなく、長年にわたって培ってきた技術やノウハウはまた形を変えて継承できる可能性を秘めている。電気自動車には既存の自動車メーカー以外の新興企業が多く参入しているが、それはエンジン開発という高いハードルに向き合う必要がないからでもある。最近は海外だけでなく、日本国内でも低価格車両が登場し始めているが、100%電気に依存する自動車ではなく、別の仕様で自動車を活用できる方法によって脱炭素化が実現できるのであれば、この先も”乗り物”としての醍醐味をまだまだ味わえる自動車が数多く誕生するのではないだろうか。



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