”つながる”クルマがもたらす新たな脅威

コラム （2019/11/18）

「コネクテッドカー」ーー最近よく耳にしたり目にする言葉ではないだろうか。IT化の進化によって、そのテクノロジーが自動車へも搭載されることになり、より快適性や利便性、さらには安全性の向上が可能となるというメリットばかりがクローズアップされているが、一方でデメリットもあることを忘れてはならない。

・つながる便利さ
コネクテッドカー。直訳すると「つながるクルマ」だが、まず容易に想像できるのは、カーナビゲーションシステムから情報を得ることができるクルマではないだろうか。カーナビを用いて目的地をセットし、それに沿ってクルマを進めるとする。仮にルート上で渋滞や事故が発生した場合、その情報がカーナビを通して情報が入る。これはGPSなどの通信手段によって入手できる情報だが、運転中のクルマが外部との通信システムと「つながる」ことが可能であるため、渋滞情報等が得られるわけだ。カーナビは、もっとも初期的な”コネクテッド”であるが、近年はインターネットシステムの急速な進化、普及によってさらに利便性の高い”コネクテッド”が利用可能になっている。

国、正確には総務省の定義によるコネクテッドカーとは、「ICT（Information and Communication Technology：情報通信技術）端末としての機能を有する自動車」を指す一方、広義に解釈すると、カーナビをはじめ、インターネットシステムを会して利用できるサービスを搭載するクルマを指す。ICTの「C」はコミュニケーション。つまり、クルマを利用する人が利用可能な「なにか」を使って外部とコミュニケーションを取ることができるクルマだということになる。それならば、スマートフォンを使えば良いじゃないか、と考えるかもしれない。だが、この場合はスマートフォンという情報通信端末をクルマに持ち込まなければサービスを利用することができない。だが、コネクテッドカーはクルマ自体に情報通信端末としての機能を搭載しているため、仮にスマートフォンを持ち込まなくても外部と”コネクテッド”が可能になる。もちろん、クルマ自体が端末としての機能を持つため、インターネットには常時接続されている。最新の道路情報を取得、渋滞や事故を回避して最適なルート検索を行うだけでなく、クルマそのものを管理する機能により、メンテナンスによる故障予防はもちろん、万が一トラブルやアクシデントに見舞われるなどの緊急時にはサポートシステムが作動し、アテンドしてくれる。

日本では高い価格帯の車両をメインに、メーカーが独自のシステムを搭載して同じようなサービスを提供しているが、欧州では「緊急通報システム」が義務化されており、コネクテッドカーが事故に遭遇した際は、緊急コールセンターを通じて最寄りの警察や消防署へ自動で通報するシステムとして稼働している。”コネクテッド”によるサービスは人命救助を筆頭に、盗難車両追跡システムや災害時における利用可能な道路の情報提供等、リアルタイムで得られる恩恵や利便性が高いものであることがおわかりいただけると思う。

・つながることで心配は増えない？
クルマが単なる移動手段ではなく、コネクテッドカーの普及によってデータ収集を担うことで社会課題を解決するデバイスになるーー。そんな発展性に期待を寄せる声が高まる一方、インターネットに常時接続されている、と聞けば、まるでインターネットを多用するパソコンと同じではないか、と思うはず。すると次に頭に浮かぶのは、システムをハッキングされる心配はないのだろうか、という点であろう。

パソコン同様、どうしても脆弱性が出てくることも避けられない。システムへのウィルス、不正アクセスへの対策はつねに行われ、利用者はそのアップデートを怠らないことが安全の確保につながるのは言うまでもない。これは”コネクテッド”されたクルマを利用する時点から負わなければならないリスクでもある。パソコンはスマートフォンを利用していても、ウィルスや不正アクセスといったトラブルとはつねに背中合わせであるように、コネクテッドカーにもそのデメリットがあることは忘れてはならない。

コネクテッドカーの普及、さらに自動運転車両の開発が進み、本格的な流通が始まると、ハッキング被害のリスクも高まるのは当然のこと。自動運転中の車両が遠隔操作される可能性もあり、今後はより高度なサイバーセキュリティが求められる。急伸するネットワークシステムという恩恵を受けて快適なカーライフを過ごしたいという願いが広がる中、利便性が高まることにより、その代償となる安全性確保のため、常に最新の対策と多重防御の準備が欠かせないと強く認識する必要がある。