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トヨタ、スズキが次世代技術で資本提携へ

コラム (2019/08/30)

8月28日、トヨタ自動車とスズキが資本提携することを発表した。テレビのニュースや新聞各社がそのニュースを伝えたが両社代表による記者会見は行われず、共同でコメントを出すに留まった。このたびの提携実現により、両社が目指すものはなにか。

・資本提携、互いの条件
資本提携の発表で明らかになったそれぞれの株式取得は、トヨタがスズキ株式の4.94%(総額960億円)、一方のスズキがトヨタ出資の半額にあたる480億円相当となるトヨタ株式のおよそ0.2%を取得する。ちなみに、提携の話は今回が初めてではない。まず、2016年10月に業務提携の検討が始まっており、合意して以降、包括提携など段階的に連携を深めている。そして今回、両社はさらに踏み込んだ形での提携へと発展。それが「資本提携」である。

資本提携とは、企業同士が互いの株式を持ち合って協力関係を結ぶことを言う。これまで両社が行ってきた技術協力や共同開発等、契約に基づく業務提携に比べ、強固な関係を築きやすいと言われている。業務提携から資本提携へと”進化”するのは、決して珍しいことではない。

・”進化”した提携、その中身とは?
これまで両社はハイブリッド車などの分野で協力関係にあった。業務提携をすることは、互いの技術や商品計画等を開示し合うことを意味する。そこで必要となるのが資本の持ち合い。これにより長期的信頼関係を担保できるからだ。今回はその担保がさらに大きくなったわけで、その背景にあるのは、さらなる業務の強化であるのは言うまでもない。

資本提携を契機に取り組むのは、自動運転や電動化といった次世代技術の開発。もちろんこれまでも業務を進めてきたが、提携を機に激化する開発競争を生き抜くため、その開発を加速させるのが狙いと見てとれる。また、生き残りという意味では、単独で次世代の技術開発を進めることが極めて難しいスズキにとって、トヨタとの提携は技術支援の面で大きな後ろ盾を得たことを意味すると言ってもいいだろう。

かつてスズキは2009年にドイツ・フォルクスワーゲン社(VW)と資本提携したことがある。19.9%もの出資を受け入れ、VWが持つクリーンディーゼルのノウハウの供与に期待を寄せた。しかし、その目論見は見事に外れ、遅々として進まない提携に業を煮やすことになり、結果として2015年に提携関係の解消を申し出た。VW社はこれを不服として国際仲裁裁判所に提訴。裁定によってスズキはVWへ違約金を払うことになったが、提携は解消された。過去の経験から多くを学んだスズキは、2016年にトヨタとの包括的提携の話が浮上し、2017年2月には環境技術や安全技術などの分野で業務提携が始まった経緯がある。以来、スズキがインドで投入するEVへの技術支援、HV向けシステム供給が進んだ。具体的な提携が形となって結実したからこそ、今回の資本提携が現実化したというわけだ。

・トヨタが強化する”仲間づくり”
近年、トヨタでは国内の自動車メーカーへの出資を拡大してきた。すでにダイハツ工業は出資比率100%の完全子会社となり、この他、日野自動車(出資50.2%)、スバル(同16.8%)、マツダ(同5.1%)となっていたが、そこにスズキが加わることになり、世界販売台数が大きく躍進することになる。

先述のように、自動運転、電動化等の開発競争が激化する今日、自動車業界は今や既存の自動車メーカーだけが手掛ける開発ではない。グーグル等の巨大IT企業がこぞって参画し、大きな時代のうねりを受けながら迎える変革が、次世代のクルマ作りへと直結する。「CASE」(※)と呼ばれる”新たなフィールド”にしっかり対応するには、同じ方向に突き進むより多くの”仲間”が必要になっているのだ。両社が共同で出した「自動運転分野を含めた新たなフィールドでの協力関係を構築して深化させ、自動車産業を取り巻く新たな課題を克服することで持続的成長を実現していきたい」というコメント。”進化の深化”を目指し、新たに”仲間”を作ったトヨタ自動車とスズキ。独自性の高い両社の強みを活かした発展に期待が高まる。

(※)CASE
Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語。2016年、パリモーターショーでドイツ・ダイムラーのディーター・ツェッチェCEOが発表した中長期戦略の中で提唱した造語と言われる。



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