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車名が消える!? マツダに見るブランド改革

コラム (2019/07/15)

7月上旬、マツダが新たなる自車ブランド改革をメディア向けに発表した。これによると、国内で販売する車両につけられた車名をやめて、すべて「マツダ」と「数字」の組み合わせにするという。日本のメーカーでは初となるこの試み、マツダの狙いとは?

・ターゲットはアメリカ
日本でマツダといえば、「デミオ」や「アテンザ」さらには「アクセラ」という名前が思い浮かぶ。コンパクトカーからハッチバック、セダンと所有層も幅広い年齢層に受け入れられているイメージが先行する。しかし、マツダは慣れ親しんだ車名の使用を止めて今後は社名である「マツダ」に数字を組み合わせ、ラインナップに統一感をもたせるというのだ。

今回のこの発表は、4日に新型最高級セダンのお披露目に併せて行われた。これまで「アテンザ」と呼ばれてきた車両は、新たに「マツダ6」として市場に出回ることとなる。社名変更を機に、2.5リッターのガソリンターボエンジンタイプも新たにリリースされた。実のところ、これに先駆け、フルモデルチェンジされた中型車「アクセラ」を5月に「マツダ3」として発表しており、マツダ6は第二弾としての発表だった。しかし、マツダ3よりも高額な車両ということもあり、改めてのプレス発表となったようだ。

車名の見直しの背景にあるのは、同社が最重要市場としてアメリカをターゲットにしている点が挙げられる。以前、アメリカでは販売台数を求めるがあまり、過剰な値引き戦略に走って安売りが定着した苦い経験がある。このため、同社はアメリカでの販売店舗の刷新にテコ入れを行い、店舗の改装によって高級感を伴うブランドへとイメージ転換を図っている。いわゆる”次世代ブランド店舗”は広々とした店内に限られた車両のみを展示。あらゆるブランド強化を進めた結果、改装前より販売台数を延ばしているという。

現在、アメリカにおける同社の新車販売シェアは30万台弱。年間およそ1700万台の新車が売れる同国ではわずか2%ほどのシェアにすぎない。同じ日本メーカーのトヨタがおよそ240万台、ホンダはおよそ160万台であることから、マツダの”発展途上”の状況は明らかであろう。転じて日本国内における同社の新車販売台数はというと、およそ21万台。そう、アメリカでの販売台数が国内のそれを上回っているのである。つまり、同社にとってはアメリカは販売全体のおよそ18%を占める屋台骨であることを認めざるを得ないというわけだ。だからこそ、アメリカ国内での店舗を高級路線に転換し、ブランド先行型で車両販売を推し進めていくことが必要であることが理解できるる。

・あのスポーツカーの名前は?
マツダ3、マツダ6と新車発表に併せて名称が変わる中、コンパクトカーとしておなじみのデミオも近々変更されるという。こちらは「マツダ2」となるのだとか。マツダは自動車メーカーの社名である一方で、今後は、「マツダ」というブランドとしての呼称になっていく、というわけだ。

確かに、日本の自動車メーカーとしては新たな試み。だが、その一方で、社名にアルファベットと数字、もしくは数字だけをつけた車両は欧州ではちっとも珍しくない。メルセデス、BMW、アウディ、プジョーあたりが思い浮かぶ。いずれもよく知られたブランド車両であり、その歴史も長い。シンプルな車名でユーザーへの訴求力を図って成功を収めてきた。マツダも統一された「マツダ」ブランドで認知度を高め、好感度を広げていくのが目標であると考えられる。

だがその一方で、残すべき車名もあるという。それが、日本で「ユーロスター」と呼ばれているあのスポーツカー、そしてすでにSUV車両で名前を統一化している「CX」シリーズが該当する。今回の「数字」化にあたり、ひと足先に統一を図っている「CX」では、開発、生産の効率化、さらに商品の統一性に取り組んできた。それだけに、受け取る側の違和感は極めて少ないように思われる。とはいえ、海外で「マツダMX-5」と呼ばれているロードスターだけは名称を維持。「ロードスターというのは実は車形を示している。商標できちんととれているのは日本だけ。これは本当に財産だと思っているので、今後もロードスターはその名前を維持していく」というのが、会社としての見解である。

クルマに与えられた名称に愛着を感じるユーザーにとっては、物寂しさを感じる改革かもしれない。だが、新たなユーザーを取り込みたいメーカーとしては、シンプルな呼称によって広がる可能性に賭けているというところだろう。



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