国交省、新車の燃費を3割改向上義務化へ

コラム （2019/06/27）

6月上旬、国土交通省および経済産業省が自動車の燃費規制における新たな基準案をまとめた。これによると、2030年度を目標に、新車の燃費を向上させることが義務付けられることになる。かなりハードルの高い目標設定となったが、これにはガソリン車だけでなくEVも対象になっている。低燃費はどこまで”加速”するのか。

・2030年の目標達成目指して
目標の時期は2030年度。国交省と経産省が提示したのは燃費の良い自動車を開発することだった。数値としては、ガソリン1リッターあたりの走行距離を平均で25.4キロ以上になるよう自動車メーカーに義務付ける。参考までにこれまで求められてきた数値は、2020年度のもので、そのときは同じ条件で平均20.3キロ以上とし、2009年度実積比で24.1％改善を義務付けてきた。このときは、HVの普及が上り調子のタイミングということもあり、目標は速やかにクリア。前倒しでの達成が実現している。ところが、今回打ち出された数値は、2016年度実積比で32.4％へと増加。メーカーは3割改善という厳しい要求を突きつけられたことになるが、新たな基準によって、二酸化炭素の排出量の削減をさらに進める方向へ舵を切ったことになる。

通常、一般的に燃費規制というものは、メーカーにおいて個別の車種ではなく、すべて販売する車両の台数の平均で達成する必要がある。燃費に優れた軽自動車から燃費をさほど考慮しないスポーツカーまでのすべてを含め、平均燃費を出さなければならない。今回の義務化によって、各メーカーは自ずとガソリン車の比率を下げ、燃費性能に優れたEVやPHV等の”次世代エコカー”の生産比率を引き上げていかなければ、数値を達成することは難しくなりそうだ。

なお、新規制では、その次世代エコカーに対しても燃費の考え方が導入されることになる。これまでEVはガソリンを必要としないため、燃費消費がゼロという見方がされていた。しかしながら、その動力として必要な電気自体が火力発電所等で作られる際、二酸化炭素を排出している点に着目。この分を燃費計算に加えることにした。結果、EVとPHVでもガソリン1リッターあたりの走行距離を算出、ガソリン車と同じ基準で比較できるようにするという。最終的に1リットルあたり40キロを超す走行距離になるのではないかと推測されている。

・目標を「義務化」する意味
10年超の目標ながら、国交省と経産省が用意した原案は、自動車メーカーへ義務化を求めるもの。両省が共同で設置した燃費基準に関する審議会がこのほど報告書をとりまとめ、2030年度の燃費基準目標として正式に決定した。今年度中に必要な法令改正が行われる。
基準案で提示された数値に変わりはなく、対象となるのは、前回から変わらずガソリン車、ディーゼル車、LPG車。今回から新たにEV、PHVが加わることもそのまま正式に報告書の中で公表された。

なお、経産省によると現在、国内のEVおよびPHVの新車販売台数は2017年度でおよそ5万4千台。全体に占める割合は1%ほどに留まっている。この新基準によって、2030年には20～30％まで拡大する目標を掲げており、現在の市場で年間100万台規模に該当するという。HVどまりになっている販売市場をEVやPHV販売へと方向づけるため、国が率先して旗振りを始める形になっているようだ。

その背景に見え隠れするのは、やはり世界的な流れがあるため。より早くガソリン車への規制を強化したヨーロッパ、中でもEUでは、昨年12月に規制案を決定しているが、これは、2030年の自動車の二酸化炭素排出量を全体で37.5％削減するというもの。やはりEU内でクリーンディーゼルやハイブリッドだけで達成することは難しいとされ、このほど日本が掲げるEVやPHVへのシフトがEUでも加速すると考えられる。2030年、2040年を境にしてガソリン車の販売禁止を発表する国も増えている。最終決議ではないとはいえ、実現に向けてこの先どのような動きが見えてくるかは不透明な部分ではあるが、掲げる目標に向け、今後どのような手段を採るのか気になるところだ。